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ハースはブルックナーの楽譜の問題の単純化に挑戦しました。つまり、いろいろな資料から理想の楽譜を作り上げたというわけなのです。ですから、ブルックナーのいろいろな時期の自筆譜の混合したものになっているのです。 「第二」など、そのツギハギが上手くつながるように新たなフレーズまで作曲しているのだそうです。その意味では「ハース版の第二」などブルックナーの全くあずかり知らない楽譜と言えるのでしょう。 それに対してノーヴァクは、その時々の状態をそのままの形で出版しよう、異なった自筆稿は別々に出版しようという方針なのです。ハースの原版を洗い直しただけでなく、例えば「第四」の初稿など新たな稿の出版もしています。 ハースもノーヴァクも“資料の復活という高邁な理想の上に出版”ということは同じですが、より客観的なのはノーヴァクといえるでしょう。ただし、多くの人が指摘するようにハース版の美しさには抗しがたいものがあります。僕もハース版が大好きです。ハースのブルックナーに対する愛情の深さを思い知る感じです。これは、朝比奈の演奏に慣れているからだけではないと思います。 |