脳循環を上げるなら世界標準のイチョウ葉エキスを!

元気に健康的に、生涯美味しく呑もう!

呑む前に飲んでおくべきは「フェカリン」(^^!


HOME

ブルックナーの楽譜の問題〜初級編

はじめに

ブルックナー研究家・やすのぶさんからのお言葉

 そもそも、ブルックナーを楽しむうえで《版の問題》なんてどうでもよいことなんです。

 演奏がよければ、何版を使っていようと全く関係のないことだと思います。演奏のよし悪しを版の問題にすりかえることに問題があるように思います。

 まあ、カットは許せんとか、あのオーケストレイションは許せんとか、いろいろありますが、それよりもまず、素直に演奏を聴くべきでは?


 これは尤もなことなのです。しかし、楽譜問題に精通している人が言うから意味があるのであって、分からない人が「版の問題なんてどうでもいい」と言っても犬の遠ぼえみたいに聞えることも事実なのです。(ホラぼや)

 ブルックナーに興味を持つと、必ず「改訂版」とか「原典版」という楽譜の問題にぶつかります。前述のやすのぶさんのおっしゃる通り、ブルックナーの音楽を愉しむうえで、そのことを知らねばならないということは全くありません。しかし、好きになった人のことを知りたくなるというのはごく自然なことでしょう。

 ただし、ブルックナーの場合、この楽譜の問題が非常に複雑で難解なのです。理解したくても、こんぐらがってしまってダメだった人や、間違った理解のままでいる人が多いようなのです。

 そこで、やすのぶさんと壁男さんの協力を仰ぎ、こんなページを作ってみたというわけです。

 普通、原典版というとロベルト・ハース(1886-1960)校訂によるハース版か、レーオポルト・ノーヴァク(1904-1991)校訂によるノーヴァク版のことを指します。

 最初に出版された楽譜、即ち初版は、ブルックナーの自筆譜との違いがあることからその正当性が疑われ、「原典版」出版の気運が高まりハースを中心に全集版として出版されたのがハース版という原典版です。

 ハースの仕事を引き継いだのがノーヴァクなのですが、ノーヴァクはハースの校訂したものも、もう一度洗い直して再刊したのです。それがノーヴァク版という原典版です。そういうわけで、原典版が二つになってしまいました。さらに「稿」の問題もあります。

 ノーヴァクは「第四」や「第八」など普段耳にするものとはかなり違う「初稿」も出版したので、事態は一層複雑になっているというわけです。

 そのほか、ブルックナーの自筆譜と最初に出版された「初版」はどうして違いがあるのかなど、疑問は一杯です。

 では、少しでも理解できるようになることを祈って・・・。


ハース版ノーヴァク版


●つい質問を・・・。

 ある日、僕は何年かぶりにクナッパーツブッシュ指揮ウィーン・フィルハーモニーによるブルックナーの「第四」を聴きました。「ロマンティック」と呼ばれている曲です。普通は原典版を使うのに、クナのディスクは初版による演奏だというので、オイレンブルク社から出版されたスコア(レートリヒ版)を見ながら聴きました。

 思い切った表情の濃さは、ほとんどスコアに書かれたものだったということに驚き、またそこまでスコアを自己消化した表現をするクナの凄さを再確認したのですが、微妙にスコアと違う部分があり、つい、ブルックナー研究家のやすのぶさんに楽譜に関する質問をしてしまったことから、底なし沼に嵌まったのでした。

ぼくが気が付いたクナの演奏スコア(レートリヒ版)との相違点

第1楽章
・49、50小節の1st.ヴァイオリン、刻みをしない(再現部も)
・565小節のホルン、タイをやめて吹きなおす。

第3楽章
・89、90小節のティンパニ、トレモロをラッパと同じリズムに変更。

第4楽章
・198小節のチェロ、ファソファシをファソファミに変更。
・482、483小節のトランペット、2分音符を追加(原典版と同じ)

なお、第1楽章209小節から、テンポが倍くらい遅くなる。いくらクラリネット、フルートに“ruhig”と書いてあってもこれはクナ独自の解釈でしょう。

第4楽章294小節の4拍目の3連符をリテヌートするのも、クナの解釈だと思う。

●1.やすのぶ

初版が出版されたあとに

【a】ユニヴァーサル版
【b】オイレンブルク版
【c】ペーター版

と3種類の版型の違う研究用増刷版が出版されました。
それぞれ番号つき9曲全部です。

【a】には編集者の名があり、それによりヴェース版とも言われています(「0番」を含む)

【b】は戦前はライプツィッヒで何回か増刷出版されていましたが、戦後は絶版になりました。
そのうち一部の曲
(三、四、七)はレートリッヒが校訂して(戦前のものと一部違います)再刊したので、レートリッヒ版と言われています。
オイレンブルクは早い時期に五と九は原典版に移行しています。

●2.ホラぼや

き、聞くんじゃなかったーって感じ。
分かりたいという欲求は心の奥底にしまい込んであるんですが、つい質問してしまうとその複雑さに辟易します。

ユニヴァーサル版、オイレンブルク版、ペーター版というのは出版社の名前ですよね。そして、ヴェースとかレートリッヒというのは人の名前で、これにも“版”が付くんですね。
これが混乱の原因の一つですね。
こういう“版”についての説明は、やすのぶさんのHPに書いてありましたっけ?

とりあえずここで、自分なりの理解を4つにまとめてみました。

(1)初版というのは最初に出版されたという意味。
(2)初稿というのは最初に完成したスコアという意味。
(3)そして、ブルックナーの場合、初版というのは初稿をいろいろ改訂した“改訂版”だ。
(4)ハースにしろ、ノーヴァクにしろ“原典版”というのはブルックナーのあずかり知らぬ楽譜で、改訂版こそブルックナーが出版を許可した楽譜である。

以上のような理解でよろしいのでしょうか?

●3.やすのぶ

聞くんじゃなかったーって感じ。

御意。

やすのぶさんのHPに書いてありましたっけ?

ありましたかね? そのときそのときの気分で書いているので。
極初歩向きには書いてないんでは?
そのうち、そういうのも書いてみましょうか?

(1)初版というのは最初に出版されたという意味。

僕は、そのように使っていますが、一般の解説では『稿』と混用しているケースがあります。
日本語としてはそれで問題はないですが、ブルックナーのように複雑な場合は正確に書き分けた方がベターだとおもいます。

(2)初稿というのは最初に完成したスコアという意味。

こちらのほうはちょっと難しいですね。
原稿
(資料)そのものを指すのか、ある時点での状態を指すのか?

(3)そして、ブルックナーの場合、初版というのは初稿をいろいろ改訂した“改訂版”だ。

これもなかなか難しい。
初稿というのは第2稿の存在を前提にしたものですから、第2稿があるのかないのか? それ自体人によってまちまちですので・・・・。

少なくとも言えることは、初版は全て、ブルックナーの最終稿態と一致しません。ということは、出版にあたって必ず校正がなされたということです。

(4)ハースにしろ、ノーヴァクにしろ“原典版”というのはブルックナーのあずかり知らぬ楽譜で、改訂版こそブルックナーが出版を許可した楽譜である。

そこまで言ってしまうのはどうかな?

時系列的にはそのとおりでしょうが、将来の出版に利用してほしいという遺言もあるので、まったく勝手に作ったというわけではありません。

また、ハースやノーヴァクは資料の復活という高邁な理想の上に出版したのですから、部分的なあるいは時代的な不備は正されるべきですが、おおむねはブルックナーの遺志どおりなのではと思います。

初版群」については「第六」と「第九」と番外(死後出版)を除いて、ブルックナーの許可の下に行なわれたことは事実でしょう。

しかし、それはブルックナー自身が思っている理想のスコアではなく、演奏上の配意を加えた第二義的なものであったことは確かです。それは「第一」や「第二」が出版されていたと同時に作られていた「第九」でさえ、「第一」や「第二」の自筆稿と同じ書き方をしていることからも窺えます。

●4.ホラぼや

やすのぶさん、初心者には話が一気に進み過ぎです。

ブルックナーがハースやノーヴァクを知らないというのは事実でしょう?
そして、ブルックナーの遺書にしたがって、研究を進めた結果「ハース校訂版」と「ノーヴァク校訂版」が出来てきたということではないんですか?
ですから、ハースやノーヴァクの仕事に対してはいろいろな評価が出てきて、
(新しい資料が見つからなくなるかぎり)第3,第4の原典版ができる可能性があるということでは?

でも、その話はおいといて、僕が
(4)ハースにしろ、ノーヴァクにしろ“原典版”というのはブルックナーのあずかり知らぬ楽譜で、改訂版こそブルックナーが出版を許可した楽譜である。』
といったのは、
『だから、改訂版こそブルックナーの意志を具現した唯一のものだ』
と言いたいのではなく、その現実的な事実のみをお聞きしたかったということです。「
時系列的にはそのとおりでしょうが、」というお返事で充分です。

その事実の確認後、遺言の話や「演奏上の配意を加えた第二義的なもの」なんて話をお聞きすれば、ハースやノーヴァクの“評価”ではなく“仕事”の意味が良く分るかなと思った次第であります。

極初歩向きには書いてないんでは?そのうち、そういうのも書いてみましょうか?
是非是非!
「初稿」「初版」「改訂版」「原典版」など、言葉の定義からやっていただきたいものです。

もし、いろいろ曖昧に使われているのが現状であれば、やすのぶさん流に定義しなおして下さい。しかも、なるべく簡潔な説明で。

大筋をつかめば、例外が出てきても対処できるんじゃなかろうかと・・・。
「18○○年稿」とかいうのは、出来れば止めてもらいたいですね。

初版は全て、ブルックナーの最終稿態と一致しません。ということは、出版にあたって必ず校正がなされたということです。
これは、良く理解出来ません。
“最終稿態”ってなんですか?

それは「第一」や「第二」が出版されていたと同時に作られていた「第九」でさえ、「第一」や「第二」の自筆稿と同じ書き方をしていることからも窺えます。
これについても、
もう少し分かり易く説明をしていただけると嬉しいのですが・・・。

それで、やすのぶさん、「第四」に関してですが、ヴェース校訂版とレートリッヒ校訂版は微妙に違うということなのですね? 

もう、どうでも良くなってきましたが、クナがどの初版を使ったかなんてのは分かるんですか?(^_^ゞ

●5.やすのぶ

「音楽」は字の如く、「音」を「楽しむ」わけです。聴いて楽しむのも然り、分析をして楽しむも然り、アプローチは十人十色であって良いと思います。

全く同感です。演奏して楽しむというのが、僕にとっては一番ですがね。

ブルックナーについては、それ専門のBBSやトピで語ればよいと思います。
僕も、ドニゼッティやムソルグスキー
(単なる一例)に興味があるわけではありませんので。でも、ついでですからホラぼやさんの質問には簡単にお答えしておきましょう。

ハースやノーヴァクの仕事に対してはいろいろな評価が出てきて、(新しい資料が見つからなくなるかぎり)第3,第4の原典版ができる可能性があるということでは?

印刷されるべき基本資料というのは、遺贈稿です。
その解釈の仕方の違いによって第3、第4の原典版が出る可能性はありますね。実際、「第九」はコールズ版という第4の原典版が出版されました。

その事実の後、遺言の話や“演奏上の配意を加えた第二義的なもの”なんて話をお聞きすれば、ハースやノーヴァクの評価ではなく仕事の意味が良く分るかなと思った次第であります。

そうですね。さすが、古くからのブルックナーファン!
それが、正しい見方であると思います。ブルックナーファンの中には、そこのところを自ら確かめずに、日ごろ目にするうわべだけの評論を総合して、自らの意見としている人たちが意外と多いものです。

やすのぶさん流に定義しなおして下さい。

しばらくお待ちください。

「18○○年稿」とかいうのは、出来れば止めてもらいたいですね。

1873年3月に書いたものと1873年6月に書いたものとが違っていれば
1873年3月稿
1873年6月稿
とでもするんでしょうかねえ。(笑い)

“最終稿態”ってなんですか?

いろんな考えがあるでしょうが、原則的には遺贈稿の現状を示す形としておくことが無難では?(例外多々あり)

<『それは「第一」や「第二」が出版されていたと同時に作られていた「第九」でさえ、「第一」や「第二」の自筆稿と同じ書き方をしていることからも窺えます。』
これについても、もう少し分かり易く説明をしていただけると嬉しいのですが・・・。

ブルックナーのスコアは楽譜を読む人の立場に立って書かれたものです。
初版群は、それに演奏する側のための配慮を加えた版です。

たとえば
「第一」最初のフォルテッシモ部
(Aのところ)、ブルックナーは全ての楽器にffを指定しています(ヴィーン稿)。初版は、トランペットとティンパニをfに減じています。
「第九」においてもこのようなところで、ブルックナーはやかましい楽器に対して強度を下げるような指定はしていません。

クナがどの初版を使ったかなんてのは分かるんですか?(^_^ゞ

ハースやノーヴァクのような資料をあたった校訂上の相違というのは、各初版系にはありません。すなわち違いと言っても性格が違うのです。

ノーヴァクはハースの原版を用いたのですが、各初版系スコアは独自に原版を作っているので、誤植の訂正や新たな誤植の紛れ込みなどによる相違がほとんどです。
ヴェース版にはイタリア語の対訳が付いていることも特徴です。レートリッヒはちょっと校訂的なことをやっていますが・・・・。

ですから、クナがどのスコアを使っていようと聴く者にとってはどうでも良いことです。
それよりもクナ自身が初版のスコアと違ったことをやっている場合の方が耳につきます。
ただ、初版のスコアを持っていないと
(ノーヴァク版を見ながら推測したのでは)、それが初版の指定なのか、クナ独自の解釈なのか判断できません。

●6.ホラぼや

やすのぶさん、御丁寧な回答を有難うございます。

ブルックナーについては、それ専門のBBSやトピで語ればよいと思います。
そうなんですがね、ブルックナー好きで楽譜問題にも興味がないわけじゃないけど、どこから手をつけてよいのやらという人は結構いると思うんですよ。

で、専門のところは話の進みが速くてついていけなくなることも多いんです。

んなわけで、やすのぶ教授、壁男助教授、よろしくお願いします。

ところで、やすのぶさんのホームページを読み直しました。
ブルックナーの交響曲の出版譜」がカラーになって読みやすくなっていました。
今回説明していただいたせいか、前に読んだときよりも理解出来ました。と言うか、前には途中で読むことを放棄してしまったような…(^_^ゞ

1873年3月に書いたものと1873年6月に書いたものとが違っていれば1873年3月稿、1873年6月稿、とでもするんでしょうかねえ。(笑い)
ダメです!
その年号が歴史の勉強を思い出してよくありません。
その稿の特徴を示す名前を付ける
(ex.派手派手稿)とか、その交響曲が出来たときのエピソードに因んだ名前を付ける(ex.証書収集稿)などして、年号はカッコに入れて下さいm(__)m

ブルックナーのスコアは楽譜を読む人の立場に立って書かれたものです。初版群は、それに演奏する側のための配慮を加えた版です。
なるほど、 良く理解出来ました。

「第四」の初版はレートリッヒのものしか持っていませんが、スケルツォ89小節「E」の前のティンパニのリズムをラッパと同じに変更している部分とか、フィナーレ「T」の後482小節のトランペットの追加なんてのは、クナの解釈ということなんでしょうか?

(2002年8月)

この会話から、もっと詳しく知りたいと思った方は、やすのぶさんのHP音楽の壺」や壁男さんのHPブルックナーの壁」を読んで下さい。もうたくさんと思った方は、ブルックナーの楽譜の問題にクビを突っ込まないほうが良いでしょう。

でも、これを読んだあなた! もう、気になって仕方がないんじゃありませんか? そんなあなたは、もう立派なブルックナー通ですよ。ヲ・タ・クってこと。お気の毒に…。

HOME


inserted by FC2 system