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ブルックナー:交響曲第7番ホ長調の初版

はじめに ●5つのチェックポイント ●演奏確認表 ●コメント


はじめに

 冒頭、ホルンの美しいレガートを従えて、チェロのスピード感溢れるテヌート(決してレガートではない)によって演奏されるべく清々しく飛翔するテーマは、想像するだけでゾクゾクします。

 この美しい交響曲の版による大きな違いは、幸か不幸か第2楽章・アダージョ打楽器が鳴るか鳴らないか位しかありません。鳴るのがノーヴァク版初版で、鳴らないのがハース版というわけです。打楽器追加の是非に関しては詳しく研究している人たちに任せます。
 尤も、ぼくは単なる好みで言ってもそれほどの拘りはありません。強いて言えば、全曲を通して聴くときは打楽器なしの方がいいかなあなんて思います。スケルツォとフィナーレの演奏にもよりますが、打楽器によって完璧なクライマックスが形成されるとアダージョで曲が終わってしまいそうですからね。

 その意味で、最近聴いた演奏ではチェリビダッケベルリンフィルによるフィナーレは、素晴らしい演奏だと思いました(第1・第2楽章は流石にテンポがノロ過ぎでしょう)
 このフィナーレ、第1主題部とコーダのテンポがはや過ぎるのが最大の欠点ですが、それ以外の部分は各楽器の融合しない美しさが強い音で表現され、同時に見事な解放感をも獲得しています。チェリの音楽としてはミュンヘンフィルとのもののほうが完成度が高いとは思いますが、ブルックナーの魅力としては断然こちらが上です。指揮者とオケの出会いの偶然性というものでしょうか。第五のフィナーレかと錯覚するくらいのスケールの大きさ。素晴らしい、気持ちイイ(^^!

 で、ぼくがこの交響曲を最初にレコード(LP)で聞いたのはマタッチ指揮チェコフィルのものでした。次に聞いたのはシューリヒトだったかな…。もう30年も前の話です。
 最初に演奏会で聴いたのは山岡重信指揮日本フィル(1975年9月)で、二度目が朝比奈隆指揮新日本フィル(1976年1月)でした。山岡の演奏はよくなかったのですが、朝比奈の演奏には第1楽章で既に感極まってしまい第2楽章以下は覚えていません。打楽器は鳴らなかったはずですよね。そういえば、朝比奈と新日本フィルは「第八」でも“シンバルなしの名演”を聴かせてくれましたっけ(^^ゞ

 そんなわけで演奏会では朝比奈ばかり聴く機会が増え、ハース版のスコアを買いました。その後ノーヴァク版も買ってスコアを眺めながら聴いたりすると、どちらでもない音のする演奏がけっこうあることに気づき、それが改訂版初版)によるものだと知りました。

 初版のスコアは持っていないので、やすのぶさんと壁男さんに分かり易い違いをうかがったりしていたのですが、物忘れが激しいので聴いて分かる初版の特徴(ノーヴァク版との違い)5つのチェックポイントとしてまとめておくことにしました。

 初版を含め多くの録音がある指揮者としてマタチッチヨッフムを中心にいくつか聴いてみたら、一つの版をそのまま使うことはほとんどなく何らかの手を加えていることが多い、ということが分かりました。

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5つのチェックポイント
【1】フライングホルン:第1楽章24小節・・・提示部
  チェロとホルンにより夫々のアーティキュレーションで始まった清々しい第1主題が、今まさにヴァイオリンと木管へ受け継ごうというその時、ホルンが半拍先に実音Hを吹く。とっても分かり易い。
【2】駆け降りるクラリネット:第1楽章306小節・・・再現部
  展開部の終わりで第2ヴァイオリンとクラリネットにより何度も繰り返される第1主題が、やっとホ長調で再現したあとの第2主題への受け渡しの時、8分音符で駆降りるクラリネットの実音Cesが1音高いDだ。けっこう分かり易い。
【3】上昇したい第2ヴァイオリン:第1楽章339小節・・・再現部
  クラリネットと一緒に第2主題を奏する第2ヴァイオリンが途中から1オクターヴ上も追加される。うっかりしてると聞き逃す。
【4】地鳴りのコントラバス:第1楽章393小節以降・・・コーダ
  ティンパニと一緒に実音Eを弾き始めるコントラバスが、3小節目で消えないでずっと弾き続ける。よほど録音が良くないか強めに弾いてないと分からないかも。
【5】彼岸へのワグナーテューバ:第2楽章189小節・・・コーダ
  彼岸へ到達すべくテューバのアンサンブルに慟哭のホルンが叫ぶ1小節前。メロディラインのテナーテューバの4拍目の音がEsでなく半音高いE。うっかりしてれば分からないが、意識があるとやや神経に障る。
なお、初版のアダージョの終わりのピツィカートの位置はノーヴァク版と同じだそうです。
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チェックポイント →

【1】
フライングHr

【2】
駆け降りるCl

【3】
上昇したいVn

【4】
地鳴りのCb

【5】
彼岸のWTub

【おまけ】
Pizz.
マタチッチ指揮
チェコフィル
<1967>

×

マタチッチ指揮
NHK交響楽団
<1969>

×

×

×

×
マタチッチ指揮
ウィーン交響楽団
<1980>

×

×

×

arco
マタチッチ指揮
スロヴェニアフィル
<1984>

×

×

×

×

arco
ヨッフム指揮
ベルリンフィル
<1964>

×

×
ヨッフム指揮
ウィーンフィル
<1974>

×

×
ヨッフム指揮
ドレスデン国立o.
<1976>

×

×

×

×
ヨッフム指揮
フランス国立o.
<1980>

×

×

×
ヨッフム指揮
コンセルトヘボウo.
<1986>

×

×

×
クナッパーツブッシュ指揮
ウィーンフィル
<1949>

クナッパーツブッシュ指揮
ケルン放送so.
<1963>

シューリヒト指揮
ハーグフィル
<1964>

×
シューリヒト指揮
ベルリンフィル
<1964>

ベイヌム指揮
コンセルトヘボウo.
<1953>

ワルター指揮
コロンビア交響楽団
<1961>

×

×

×

×
チェリビダッケ指揮
シュトゥットガルトRso.
<1971>

×

×

×

×

×
チェリビダッケ指揮
ミュンヘンフィル
<1990>

×

×

×

×

チェリビダッケ指揮
ベルリンフィル
<1992>

×

×

×

×

ザンデルリンク指揮
シュトゥットガルトRso.
<1999>

×

×

×

×

レークナー指揮
ベルリンRo.
<1983>

×

×

×

×
ヴァント指揮
ケルンRso.
<1980>

×

×

×

×
*【おまけ】のPizzはアダージョの最後の部分のこと。初版ノーヴァク版は同じだから「×」ハース版ということ。
*「?」は残念ながら聞き取れなかった。

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コメント

 マタチッチチェコフィルとの演奏は初版のはずなのにアダージョのテナーテューバ【5】は、初版になっていない。にもかかわらず、スロヴェニアフィルとの演奏はノーヴァク版なのに、その部分【5】は初版の音に変更している。
 4種類の録音が全て違っているのもおもしろい。細かいことには拘らない豪快な演奏を聴かせるマタチッチらしいともいえそうだが、第八の第1楽章で出典不明のフルートを追加したりするマタチッチだから、何か考えがあったのかもしれない。

 ヨッフムは初版とノーヴァク版を使っているが、いつの演奏でも第1楽章のクラリネット【2】は原典版で、アダージョのテナーテューバ【5】は初版だ。ポリシーがあるといえる。でも結局、どれも“完全初版”にも“完全ノーヴァク版”にもなっていないという矛盾。
 なお、コンセルトヘボウ盤のアダージョはティンパニとトライアングルだけが鳴り、シンバルが入っていない

 クナシューリヒト(アダージョのピツィカートの位置はハース版だ)は、おそらくほぼ完全初版による演奏だとおもわれる。特にクナ/ウィーン盤シューリヒト/ハーグフィル盤は第1楽章・コーダのコントラバス【4】を弾いていることが確認できる貴重な演奏といえるかもしれない。

 ベイヌムは初版による演奏に違いないがアダージョのティンパニに問題がある。なんと、本来のたぶん1小節前(176)からGisでそっとトレモロで入りクレッシェンドしてとなる。気持ちは分からなくもないが余計なこった)*o*(

 ワルター盤はハース版と思われるが思わぬところに初版の影響がある。

 チェリビダッケシュトゥットガルトとの演奏だけ違う。ハース版を基本にしているのは確実だが、部分的に引用しているのはノーヴァク版ではなく初版だという推理が出来る。
 なお、全ての演奏で打楽器の追加があるが、シュトゥットガルト盤ではティンパニが最初のトレモロで既にのばす拍を間違え「GーCーー」で合わそうと必死になるが結局1小節先に終わってしまうという面白さだ。

 レークナーはともかく、ヴァントが駆降りるクラリネット【2】とテナーテューバ【5】が初版なのにビックリだ。全然ハース版信奉者じゃないじゃん。ノーヴァクじゃなきゃイイってことか?

 この表には書いてないけど、朝比奈もジャンジャン盤や聖フローリアン盤ではテナーテューバ【5】が初版の音だ。

 尤も、ごちゃまぜになったの演奏になるのは、パート譜のせいではないかという意見もある。
 怪しげなパート譜を使っていたり、以前やった書き込みのあるものを使ったりで、時間の制約もありあまり細かいところまで打ち合わせをする時間がないかもしれない、ということだ。
 プロらしいといえばそうだが、もしそうならプロだからこそ細かいところまでチャンとやれよ!と言いたい。

2004年2月

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