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2005年7月5日(火)東京芸術劇場大ホール ●交響曲第4番変ホ長調〜国際ブルックナー協会版第3稿 これはいわゆる「初版系」の楽譜をちゃんと編集したということらしい。協会版第3稿としては世界初演だが、所謂クナやフルヴェンが演奏していた楽譜とほぼ同じものの再演ということだ。 曲が曲だけに予想を上回らない、やや不満の残る演奏会だった(^^ゞ まず、オケの状態は悪くなかったがいかんせん弦が弱い。ヴィオラが弱いのは諦めていたが、席のせいか(ほぼ中央、舞台に向かって右寄り)低弦の響も今一。ヴァイオリンもコンマスの音しか聞こえないんじゃなかろうかというくらい厚みに乏しい。みんながコンマスみたいに弾いたら鬱陶しいだろうが、後ろの人たちももう少ししっかり弾いてよって感じ。 金管は汚い音を出さないところはいいのだが、楽器を十分に鳴らしている部分が少なく、如何にも力不足という感じだ。音量の問題というより強さが足りない。ホルンのトップは無難に吹いていたが、あの音色はたぶんBシングルだな。下手じゃないだけに、深みが全く足りなくて残念。そしてティンパニは相変わらず叩き過ぎでうるさい。 指揮者の内藤彰は特別なことを何もしないのが凶と出た。 初版として最初に目立つヴァイオリンとフルートのオクターヴ上げのキザミ無し部分は、流石に美しかった。しかし、特に両端楽章の第2主題部だが、初版特有のオーケストレイションの変更による楽器の移り変わりなど、ものにしてない感じでやや不自然。こういうところはオケの技量以前の問題で、演奏に意気込みと愛情が足りないんじゃないかと疑う。 初版は音符の違いだけでなく、ノーヴァク版などと違って表情に関する書き込みが多いわけだが、内藤は本当に楽譜の指示通りに演奏したのだろうか? それともブルックナー協会版第3稿にはそんな指示はないのか? それにしても、開始前、譜面台はあるのにスコアが載っていないので「暗譜でやるのか!? カッコイイ!!」と思ったら、忘れてきただけだったようだ。ステマネが持ってきて深々とお辞儀をしていったのには参った。ナイスなショートコント(^^! 内藤さん、演奏にもこのくらいの仕掛けが欲しかったな)*o*( デルタクラシックスによるCD(DCCA-0017)を聴いた。 ライブの時よりも弦が聞こえてきて、全体的には決して悪くない。流れの良い流線型のブルックナーという感じだ。力づくのところのない伸びやかで美しい響きはライブで感じた通りに美しく、これは大きな長所となっている。 しかし、聞こえてくるとはいえ弦の弱さ、軟弱さはやはり欠点だ。特に第2ヴァイオリンとコントラバスは弱過ぎ。 表現不足につながることかもしれないが、内藤の指揮ぶりは奇を衒わないオーソドックスなものだ。 オケは限られた条件の中では頑張っている、なんて評価はプロとして失礼だと思う。絶対評価をされるべきだ。勿論ぼくにはそんな力はないけど・・・。 なんにしても、初版系スコアの響きを最新録音で聴けるという意味で、このCDの価値は大きい。この意味では推薦。内藤の解釈は準推薦。オケの出来は無印。トータル評価は準推薦といったところか。 2006年3月17日 |