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●交響曲第8番ハ短調 友人のH君がこれを聴かなくちゃダメだよと言って差し出したのがこのパイタの「第八」だった。解説を見たら宇野さんが「今までのどのCDよりもフルトヴェングラーに似ている。」なんて書いてあるので、喜んで借りてきた。と言うのは、前に聴いたフルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による「第八」(1954)をけっこう気に入っていたから、あの演奏がステレオで聴けるのなら素晴らしいと思ったのだ。 ワオ、物凄い推進力のある第1楽章。テンポ変化も激しいけど、どこがフルトヴェングラーに似ている?って感じ。全体の印象は全く違うと言ってもいいくらいだ。抽象的な表現だが“深味”が違いすぎ。金管の強奏は暴力的だし、肝心なところでの弦の鳴りが悪い。さらに、フレージングが短いので、呼吸が浅い感じで息苦しくなる。これは特に第1主題部のリズムの悪さにもつながっていると言える。 第2楽章は、最速か!? かのレークナーより速そうだ。 アダージョはゆったりはじまる。リズムがぼやけているなんてのは最初から期待していないのでどうでも良いが、やはりせかせかと動かすテンポ変化が鬱陶しい。それでも、主題再現の部分の非常に細やかな表情にはホロッとしてしまう。しかし、第1楽章で気になった弦の鳴りの悪さが、この楽章では一層気になるのは当然か。第五部では、それが致命的だ。コーダはオケの実力不足が露呈してしまい残念。 フィナーレはまた速めのテンポで突き進む。弦の弱さと金管のやかましさが揃ってしまえば多くは望めない。尤も、その金管には突き刺すような鋭い煩さがないのが不幸中の幸いだ。つまり「あっちでやって」くれればけっこう良い音色なのだ。 全体が良い演奏なら、部分的な欠点を指摘してもその演奏の価値が下らないのと同じで、全体的にダメな演奏の良いところを探してみても焼け石に水的なものかな? 基本はハース版。随所に初版からの表情を採り入れているようだ。宇野さんは「面白いのは、パイタが《改訂版》の表情を随所に採り入れていることで、」なんて書いてあるが、フルトヴェングラーに私淑した人なら当然といえよう(^^! 2004年8月29日 |