1999年

*10月23日(土) 第26回定期演奏会

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調
ブラームス
:交響曲第4番ホ短調

迷ホラ吹き:駿河フィルから三島フィルに改名して、もう一年がたちました。

ぼやきオヤジ:早いもんだ・・・。景気の悪さは変わらんがな・・・。

迷ホラ吹き:はやくもボヤきましたね。やめて下さいよ。ただでさえ今年のプログラムは、去年と違ってぐっと渋くなっているんですから。

ぼやきオヤジ:ところで副指揮者のYさんは来ないのかな?

迷ホラ吹き:ボヤキさんの聞くに堪えないオヤジギャグに辟易してましたからね。

ぼやきオヤジ:最近、オヤジギャグが流行っているのを知らんのかな。

迷ホラ吹き:とにかく、今日は二人で話を進めます。

ぼやきオヤジ:今回はブラームス(1833-1897)だけか。確かに、前回に比べなくても充分渋いプログラムだな。ブラームス好きにはこたえられんだろうがね。

迷ホラ吹き:ぼくはブラームスってあんまり好きじゃないんですが、このピアノ協奏曲第1番は好きで、よく聴くんですよ。だって、ほとばしるような、でもどこか初々しい情熱がストレートに伝わってくるじゃないですか。他の作品と違って、回り諄くないのがいいんですよ。

ぼやきオヤジ:回り諄い、踏ん切りが悪い、慎重、優柔不断、唯我独尊、堅牢、真摯、慇懃、陰鬱、古風、質素倹約、内向的、合理的、意志強固ってのがブラームスの音楽の個性でもあり、本人の性格でもあったんだがな。

迷ホラ吹き:ウーワッ! お付き合いしたくなさそうな人ですね。

ぼやきオヤジ:ナイーブってのもあるぞ。

迷ホラ吹き:デブで、あの厳めしいヒゲ面にナイーブは似合いませんね。

ぼやきオヤジ:バカ言っちゃいかん。彼だって若いころは太っちゃいないし、ヒゲを生やしはじめたのだって45歳の時からなんだ。この曲を作曲したのは20代前半、ハンサムで繊細な感じの好青年だったって話だ。それにだ、デブでもヒゲ面でもナイーブな人は居る。

迷ホラ吹き:しっ、失礼しました。

ぼやきオヤジ:分かればよろしい。

迷ホラ吹き:とにかく、この協奏曲は素直で肯定的なのがいいのですよ。自分に正直な感じがします。

ぼやきオヤジ:第1楽章は、いきなりカウンターパンチをくらわすような冒頭からただごとではないが、この第1主題部はベートーヴェンばりの情熱に苦悩がにじんでいる。しかし、閉じ籠らずに解決を目指している感じがいいだろう。

迷ホラ吹き:第2主題のロマンチシズムも忘れられません。まるでシューマンみたいに夢のよう。崇高で、敬虔な祈りのような第2楽章も素敵ですね。

ぼやきオヤジ:シューマンといえば、クララを知っているかな。

迷ホラ吹き:当時の人気絶頂の美人女流ピアニストで、シューマンの奥さんでしょう?

ぼやきオヤジ:うん、彼女の得意料理はシューマイだった・・・。

迷ホラ吹き:・・・頭痛がしてきた・・・。

ぼやきオヤジ:すまん、これはクララない冗談だ。

迷ホラ吹き:・・・か、帰らせていただきます。

ぼやきオヤジ:待ってくれ、待ってくれ。もうダジャランから。

迷ホラ吹き:ダジャランとはナンジャラホイ。真面目にお願いいますよ。マ・ジ・メにね。

ぼやきオヤジ:(この2段構えのダジャレは受けると思ったんだがな、ブツブツ・・・)

迷ホラ吹き:(この寒いオヤジギャグで風邪を引く人が出なければいいんだけど・・・)

ぼやきオヤジ:ウム、分かった。シューマン夫妻の話だったな。ブラームスの才能を認め、世に送り出したのがシューマンなんだ。いわばブラームスにとっては恩人だな。そのシューマンはブラームスとの出会いから半年後になんと自殺を図り、精神病院に収容されてしまったんだ。六人の子供をかかえ、おなかにもう一人身籠もっていた妻クララの落胆ぶりは想像に難くないだろう。そのクララに同情し、助けていくうちに恋が芽生えたってわけさ。

迷ホラ吹き:人妻と、しかも自分の恩人の妻との恋ですか。ブラームスもなかなかやるもんですねえ。

ぼやきオヤジ:そんな時分に作られたのがこの協奏曲なのさ。クララへの尊敬が愛情に変わっていく喜びと苦しみが表現されているともいえる。

迷ホラ吹き:なるほど、それで第3楽章は夢や希望、憧れに誘惑などが強い意志の力で統合され、しっかりとしたフォルムから情熱が溢れているわけですね。

ぼやきオヤジ:ウム、なかなかうまい表現だ。ロマンチックなフレーズの中に突然バッハ風フーガが出てくるところなど、古風な新古典派ブラームスの面目躍如と言いたいところだな。

迷ホラ吹き:ところで、ブラームスとクララの恋はその後どうなったのですか?

ぼやきオヤジ:シューマンは2年半の闘病生活の末亡くなったんだが、ブラームスの恋もそこまでさ。生涯を通じての友情に変わったってわけだ。

迷ホラ吹き:どうしてかなあ。

ぼやきオヤジ:そんな事も分からんのかい。人妻と未亡人だったら、やはり人妻の方がスリルがあって心は燃え上がるだろうって。

迷ホラ吹き:エーッ。ホントですか。それって、問題発言じゃないですか?

ぼやきオヤジ:さあさあ、次はブラームス晩年の最高傑作交響曲第4番。このとき彼は52才だ。

迷ホラ吹き:この曲こそ、あの厳めしいヒゲ面がピッタリなわけですね。でも、いくら最高傑作といっても、何かしんねりむっつりした暗さが好きになれないんですよね。

ぼやきオヤジ:それが好きだという人もいるんだな。ここでは『12音技法』を考案したシェーンベルクの言葉を引用させてもらおう。
彼は、ブラームスから学んだものとして

(1)不規則な拍節法及びフレーズの拡大と縮小。

(2)いかなる構造も細部まで仕上げること。

(3)楽曲構造の体系化。

(4)節約、それでいて豊かであること。

と4つに纏めている。
この第4交響曲、初演を失敗したわけではないが当時の人たちにはあまり理解されなかったんだ。形式の古さと叙情性の欠如が一因だが、古い形式は節約につながり、そこに盛り込まれた斬新さが豊かさになっている。陳腐な叙情性などは犬にでも喰わしちまえ、といったところだ。この曲こそ『節約、しかし豊かだ』だと思わんかい。これこそ人生を味わい尽くした男の黄昏、男のロマンといいたいんだが・・・。

迷ホラ吹き:ハッキリ言い切りませんね。ぼやきさん、何かブラームスと性格が似てきません?

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