2000年

*10月8日(日) 第27回定期演奏会

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調 作品104
ベートーヴェン
:交響曲第3番変ホ長調 55作品「英雄」

ぼやきオヤジドヴォジャーク(1841-1904)は、全く偉大な凡人だった!

迷ホラ吹き:いきなり、どうしたんですか?

ぼやきオヤジ:ウム、芸術家なんてのは大概、一般人とかけ離れた奇人であったり、偏屈なところがあるもんだ。何回も妻を取り替えたり、不倫・駆け落ち当たり前、どこかに隠し子がいたりなんてスキャンダルは、芸術家の勲章みたいなものだろう。

迷ホラ吹き:そ、そんなこともないでしょうが、そんな気がするのも事実ですね。これって、偏見じゃないですか?

ぼやきオヤジ:半分は事実、半分は偏見と言っていいだろう。しかし、そんな偏見をも完全に吹き飛ばす存在が、ドヴォジャークだってことなんだな。去年やったブラームスのような面白い話は、そうはないってことさ。

迷ホラ吹き:そういえば、ドヴォルザークの話で聞いたことがあるのは、大の機関車好きだったということくらいでしょうかね。

ぼやきオヤジ:認められるまでは貧乏暮らしではあったが、良き夫であり、良き父親であり、健康的な朝型人間の芸術家だったんだな。夜遅くまで飲んだくれることもない。

迷ホラ吹き:ハイ! オケの皆さん、見習いましょうね(・・・話題を変えねば・・・)。
ところで、ドヴォルザークの出身はチェコの田舎の肉屋でしたっけ?

ぼやきオヤジ:そう、チェコでは田舎から芸術家が輩出されることが多いんだ。
チェコ民族は1620年から1918年まで、他国に支配されるという苦難の道を歩むんだが、18世紀の終わり頃から民族復興運動が芸術全般に及びはじめ、チェコ音楽史の上では、芸術と政治が連動してナショナリズムの高まりを見せることが特徴なんだな。そして、その時代がドヴォジャークの生きた時代なんだ。

迷ホラ吹き:故郷を大切に歌い上げるという、国民楽派の時代ってヤツですね。

ぼやきオヤジ:その故郷を思う気持ちが強くなるのは、故郷を離れたときだというのは理解できるだろう。

迷ホラ吹き:なるほど、それがアメリカ時代ということですね。

ぼやきオヤジ:ドヴォジャークは、1892年秋から約2年半ほどニューヨークの音楽院の院長として、アメリカに滞在している。その時の交響曲に「新世界から」があり、弦楽四重奏曲に「アメリカ」があるんだが、このチェロ協奏曲もその時代の傑作なんだな。

迷ホラ吹き:確かに、故郷を慕う気持ちが激しくもしみじみと伝わる美しい曲ですね。

ぼやきオヤジナイアガラの滝を見て着想を得たそうだがね。

迷ホラ吹き:ちっとも、そんな感じはしませんけどねえ。

ぼやきオヤジ:最初の着想を如何に昇華するかが、芸術家たる所以だろう。とにかく、このチェロ協奏曲は、アメリカ民謡の哀愁を帯びた叙情性を自身が持つスラブ的な情熱に融合させ、郷愁の念をじっくり歌い上げた名曲というわけなんだが、独奏チェロに求められる技巧は超絶的だし、オーケストラパートも立派な構成と響きを持つため、見事に普遍性を獲得しているといえるんだ。

迷ホラ吹き:そうですね。僕たちも演奏していて、単なる伴奏とは違うって感じで気が抜けません。それに、とにかくメロディーがいい!

ぼやきオヤジ:ドヴォジャークを世に出したのはかのブラームス(1833-1897)なんだが、ドヴォジャークのごみ箱をあさりたいといってるんだ、彼は。

迷ホラ吹き:ホントですか?

ぼやきオヤジ:さあね。しかし、ドヴォジャークのメロディメイカーの逸話として、さもありなんという感じだろう?

迷ホラ吹き:確かに。ブラームスがドヴォルザークを高く評価していたのは事実で、特にこのチェロ協奏曲について何か言ってましたよね。

ぼやきオヤジ:「こんなチェロ協奏曲が人間の手で書けるということを、私はどうして気が付かなかったのだろう」なんてことを言っている。

迷ホラ吹き:ところで、さっきから気になっていることがあるんですが。

ぼやきオヤジ:なんだい?

迷ホラ吹き:何でドヴォルザークじゃなくて、ドヴォジャークなんですか?

ぼやきオヤジ:最もチェコ語に近い発音だと、こうなるってことさ。

迷ホラ吹き:へー、そうなんだ。

ぼやきオヤジ:祖国愛に満ちたドヴォジャークに対する敬意ってもんだな。

迷ホラ吹きベートーヴェン(1770-1827)は、全くもって偉大な天才だった!

ぼやきオヤジ:いきなり、どうしたんだい。

迷ホラ吹き:いえネ、ベートーヴェンってのは、何回聴いても、何回演奏しても面白いなあと思って。

ぼやきオヤジ:味わい深いってことだな。

迷ホラ吹き:今回の交響曲第3番の「エロイカ」ってのは、ナポレオンのことですよね。

ぼやきオヤジ:そう、最初はナポレオンに捧げるつもりだったんだが、彼が皇帝の座についたことで、それを取りやめたんだ。自由な革命児ベートーヴェンの面目躍如というところだな。名指揮者ブルーノ・ワルターは「ナポレオンは死んだがベートーヴェンは生きている」なんて言っている。

迷ホラ吹き:確かに、ベートーヴェンの音楽に触れると熱い命を感じます。

ぼやきオヤジ:そして、深い。ベートーヴェンは、天才モーツァルトに対抗して溢れ出る楽想を否定したから、味わい深いとも言えるんだ。

迷ホラ吹き:どういうことですか?

ぼやきオヤジ:主題とすべきモチーフを熟考して選び、その構成にたっぷり時間をかけるんだ。そして無駄な部分を削りにけずって、作品を結晶化させるというわけさ。疎かにできる音は一音たりとも無いんだから、演奏家の責任は重いと言える。

迷ホラ吹き:なかなかシビアなことを言ってくれますが、逆に言えば、どのパートにもやりがいがあるってもんです。

ぼやきオヤジ:そんなベートーヴェンが、この「エロイカ」の第1楽章の終わりの部分で面白いことをやっている。

迷ホラ吹き:そんなところ、ありましたっけ?

ぼやきオヤジ:主要テーマがトランペットにより、勝利するかのように高らかに奏される部分があるだろう。そのテーマ、楽譜では途中から木管に引き継がれるように書かれているんだ。

迷ホラ吹き:ああ、普通、そのテーマが聞こえなくなっちゃうんで、トランペットにそのまま吹かせるところですね。關谷先生もそうしますけど、ベートーヴェンはどうしてあんな書き方をしたんでしょうね?

ぼやきオヤジ:実は、英雄の破滅を表現するために敢えてあのような、テーマの行方不明をやったという説もあるんだ。

迷ホラ吹き:エーッ! そうなんですか?

ぼやきオヤジ:だから、第2楽章葬送行進曲になっているだろうが。

迷ホラ吹き:な、なるほど。

ぼやきオヤジ:それにしても、ベートーヴェンドヴォジャークホルン3本のオーケストレイションで見事な曲を書いたもんだ。

迷ホラ吹き:そうなんですよ。普通ホルンは2本または4本セットなのに、今回の曲は両方とも3本なんですね。しかもチェロ協奏曲第2楽章に、「エロイカ」は第3楽章に、その3本のホルンを見事に生かした部分が出てくるんです。

ぼやきオヤジ:せいぜいアルコールを控えて、祖国を思う英雄になってくれ。

迷ホラ吹き:よくさらっときま〜す。ところでぼやきさん、今日は駄洒落が出ませんでしたね。

ぼやきオヤジ:おお、忘れていた。
打ち上げではビールトーヴェンで乾杯したあと、ドヴォルコニャックでも呑むかい?

迷ホラ吹き:言うんじゃなかった・・・。

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