2001年

*10月28日(日) 第28回定期演奏会

メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」
メンデルスゾーン
:ヴァイオリン協奏曲
シベリウス
:交響曲第2番ニ長調

迷ホラ吹き:ぼやきさん、この「フィンガルの洞窟」の楽譜に書いてある、ちょっと臭そうなヘブリデス(hebrides)って何ですか?

ぼやきオヤジ:屁・ブリ・出す? ・・・ああ、ヘブリディースのことか。

迷ホラ吹き:ヘブリディースと読むんですか。ドイツ語かと思ったんですが、よく見たら定冠詞のTheが付いていますね、へへへ・・・。

ぼやきオヤジ:「フィンガルの洞窟」の原題はドイツ語でヘブリーデンというんだ。これはスコットランド北西岸のヘブリディース諸島のことで、その中のスタッファ島南岸に「フィンガルの洞窟」があるってわけさ。因に「フィンガル」は伝説上の英雄の名さ。

迷ホラ吹き:そういうことだったんですか。
ワーグナー(1813-1883)はこの曲を聴いてメンデルスゾ−ン(1809-1847)を「第一級の風景画家」と呼んだそうですね。

ぼやきオヤジ:ワーグナーとメンデルスゾーンは不和の関係にあったんだが、その言葉はあながち皮肉とばかりは言えんだろうな。

迷ホラ吹き:僕はこの曲を聴くと、なぜか心の琴線が共鳴するように震えます。

ぼやきオヤジ:メンデルスゾーンは、二十歳の時に初めて親と離れて海外旅行をしたんだ。つまり、フランスやイタリアではなくてイギリスへということ。

迷ホラ吹き:なるほど、彼はハンブルク生まれのユダヤ人でしたっけネ。

ぼやきオヤジ:その旅行のおりに、ヘブリディース諸島を訪れたんだな。荒涼として歴史の悲しさを感じさせるスコットランドの雰囲気や、船から眺めたヘブリディース諸島の景観は彼に多くの霊感を与え、この名曲が作られたということさ。

迷ホラ吹き:「スコットランド交響曲」もそうですが、その思い起こさせる情景はどこか非日常的で、神秘的な雰囲気が漂い、昔懐かしい感じが魅力的です。妖精とかも出てきそうな…。

ぼやきオヤジ:そこが「第一級の風景画家」たる所以だろう。実際、絵筆を持ってもなかなかの腕前だったらしい。

迷ホラ吹き:次は、ヴァイオリン協奏曲の定番中の定番です。

ぼやきオヤジ:ウム、これはメンデルスゾーン晩年の傑作なんだな。とは言っても35歳の時の作品だ。

迷ホラ吹き:この曲は3つの楽章に分かれていますけど、切れ目なく続けて演奏されるように作曲されていますね。

ぼやきオヤジ:当時は、1つの交響曲でも協奏曲でも、全曲が続けて演奏されるとはかぎらなかったんだ。今ではとても考えられんだろうが、楽章と楽章の間に違う作曲家の曲を入れるなんてのは普通だったんだな。

迷ホラ吹き:へえー、信じられませんねぇ!

ぼやきオヤジ:そこで、全曲をつなげてしまえば、ブチ切りにされる心配がなくなるってわけさ。他にも、カデンツを第1楽章のど真ん中に持って来たなんていう新機軸もある。

迷ホラ吹き:そういわれてみれば、普通カデンツは再現部の終わりにあるのに、この曲は展開部の終わりにありますね。

ぼやきオヤジ:しかも、演奏者に勝手を許さぬようカデンツ部分もしっかり作曲して楽譜に書いているってわけなんだ。

迷ホラ吹き:なるほど、あまりにも自然に聞き流していましたが、作曲家の自作に対する愛が随所に込められているんですねえ。

ぼやきオヤジ:名曲とはそういうものさ。

迷ホラ吹き:本当にこの協奏曲は、一度聴いたら忘れられないような魅力がありますよね。短調なのにも関わらず、透明で澄み切った流れるような旋律が均整のとれたプロポーションの中に込められていて、素朴で控えめな美女を見るようなときめきを覚えます。

ぼやきオヤジ:そんな美女、最近、とんとお目にかかったことがないが、三島フィルにはいないのかい?

迷ホラ吹き:えっ!? ・・・そ、そりゃあもう、び、美人ぞろいで・・・。

ぼやきオヤジ:何で、そんなにうろたえ、どもるのか知らんが、次はヤン・シベリウス(1865-1957)交響曲第2番だ。

迷ホラ吹き:シベリウスは「フィンランディア」で有名なフィンランドの大作曲家ですね。

ぼやきオヤジ:彼の代表作とも言えるこの第2交響曲は、1901年2月のイタリア旅行の際に着手されたんだ。

迷ホラ吹き:そのわりには、からっと晴れたイタリアの空はありませんね。

ぼやきオヤジ:まあ、そうかもしれんな。旅行中もシベリウスの心は祖国に向かっていたようだし、実際、作曲の大半は帰国後のヘルシンキでされていて、完成したのは翌年なんだ。

迷ホラ吹き:第1楽章は、弦の主要動機に乗って木管に奏される民謡風の第1主題がとてもかわいらしく、それを優しく包み込むように続くホルンも印象的ですね。

ぼやきオヤジ:しかし、明るく軽いのもそこまでで、あとは第2主題部も展開部も再現部も、ずっと仄暗い厳しさを感じさせるんだな。

迷ホラ吹き:北欧の、凍てつく大地ですか?

ぼやきオヤジ:それもあるが、フィンランド人の孤立癖が滲み出ているとも言えるんだ。

迷ホラ吹き:孤立癖?

ぼやきオヤジ:そう、フィンランド人は孤独を好み、森や湖を愛する人が多いと言われているんだ。

迷ホラ吹き:そういえば、第2楽章は、もろにそんな感じですね。

ぼやきオヤジ:孤独に思索に耽るシベリウスを、数え違いのリズムで壊さなければいいが…。

迷ホラ吹き:縁起の悪いこと言わないで下さいよ。次の第3楽章もテンポが速くて大変なんですから。

ぼやきオヤジ:ハハ、まあ気にしないでくれ。そのスケルツォ的な第3楽章は、牧歌的気分のトリオ部分から緊張したクレッシェンドが長く続き、そのまま第4楽章へ切れ目無く演奏されるんだが、ここもなかなかの聴きものと言えるだろう。

迷ホラ吹き:確かに。第4楽章へ入ったときの、待ちに待った解放感は何とも言えないものがあります。

ぼやきオヤジ:ところで、晩年のシベリウスの写真を見たことがあるかい?

迷ホラ吹き:はげ頭に三白眼、眉間にしわを寄せた怖い顔のシベリウスですね。

ぼやきオヤジ:その眉間のシワは、随分深く刻まれているんだが、何本あるか知っているかい?

迷ホラ吹き:知るわけないじゃないですか。

ぼやきオヤジ:自己批判精神の強いシベリウスは、交響曲を一曲作るたびに眉間にシワが刻まれていったんだな。

迷ホラ吹き:ということは、シワは7本ですか?

ぼやきオヤジ:そういうことになる。特に4番目と7番目のシワは深い。

迷ホラ吹き:そんなバカな・・・。

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