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セスナに乗ったブルックナー
〜「第六」の第1楽章〜

 ブルックナー大好き人間の僕だけど、「第六」だけは、なぜか、つかみ所が無く「聴きたい!」と言う欲求に襲われることの無い交響曲だった。「第一」や「第二」は無性に聴きたくなるときがあるのになあ…。もしかしたら「第六」は、ブルックナーの交響曲の中でも、何か特殊なものなんじゃなかろうか? 中期から後期への単なる過渡期の作品のようでもあり、すっきりと無駄を省いた傑作のようでもある。

 「第六」のことを初期交響曲の延長線上にある交響曲だと言う人もいるが、僕はあまりそうは思わないな、やっぱり。だって、「第六」は洗練されているもの。
 初期交響曲は言ってみれば原石の魅力だけど、「第六」はしっかり磨かれているもの。だからか? つかみ所が無かったのは。
 よくたとえられるけど、いつもと逆で、この曲は木綿よりも絹ってこと? よく分からないけど、特に第1楽章と第3楽章が他とは違う感じがする。ちょっと聞いただけで、明らかにブルックナーなのに他のブルックナーと違う。なんでだ?

 まず、冒頭から、伴奏がもやもやしないでちゃんとリズミックなのが変わっている。しかも、<2(1+1)+3>のブルックナー・リズムが変形されて<(1.5+0.5)+3>になっている。何だか数学みたいだけど、そのリズムに乗って低弦に第1主題が出てくる。これは、透明感のある暗さを湛えたテーマで、ヴァイオリンと管楽器によりフォルティッシモで奏されるときには低弦とティンパニが力強くリズムを刻む。う〜ん、大宇宙とまではいかないけど、これはブルックナーだあ!

 ところが、第2主題がけっこう変だ。
まず、前半4小節と後半4小節が、まるで別の曲を継ぎ足したように変化するのが面白い。唐突に変化するのはブルックナーの得意技だけど、ここは反則技に近いんじゃないかと思っちゃう。あまりに不思議で、取っつきにくい。
 それだけじゃなくて、拍子が4/4系(2/2なんだけど)の主題に2分三連の伴奏が付いているから一層複雑だあ(ここを聴くのがだんだん快感になっていく自分が怖い)。これは「第五」の第2楽章に似ていなくもないけど…。
 この1拍に音符が2つ入るパターンと3つ入るパターンが、お互いに陰に日なたになるためテンポが頻繁に変わるような印象も受けちゃう。ぎくしゃくして流れが悪いってこと。でも、その中にいつものブルックナーらしい自然がちりばめられる。そうこうするうちに「第五」の大伽藍を思いださせるような第3主題が登場して安心する。

 フルートの3連符に導かれて入る展開部は、驚くほど短いな。
 その中で、からの第1主題の転回型が出てくるところからは、いつもの(?)ブルックナーと少し雰囲気が違うと感じるのは僕だけか? つまり、森やアルプスを散策するイメージや、そこから景色を眺めたときに受ける印象をも感じさせるのがブルックナーの特徴だったけど、ここはもっと視線が高い。そして、スピードもある。
 ティンパニを従えた冒頭のリズムで第1主題が再現される再現部はなかなかの迫力だけど、前述のその雰囲気をもっと強く感じさせるところが、終止部みたいな第2展開部みたいなからだ。

 低弦の行進のリズムと、吹き流しの和音と3連符の伴奏に静かに乗っかって気持ち良くおよぐような第1主題は、彼方にアルプスを頂く広大な丘陵地帯をセスナで飛ぶようで、実に爽快だ。果てしなく続く、大地の実感。ここ、本当に快く流れていくじゃない。第2主題の流れの悪さは、まるでここを生かすためにあるかのよう。
 そういえば、この曲はゲネラル・パウゼが無い。それで、一層、唐突に曲が変化するんだ。…が、病みつきになりそう。

 「第三」「第四」「第五」からの雰囲気もあるけど「第七」「第八」「第九」の先取りもある。それゆえ過渡期の作品かもしれないが、独自の個性を光らせている傑作だと思いますね、断然。そして、けっこう繊細かも…。

 初めてブルックナーに接してから約30年、ついにと言うかやっとというか、「第六」を心から聴きたいと思うようになった。

(2001.10月)

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