戻る

生酒・生詰め酒・生貯蔵酒の違い

 「火入れ」とは熱殺菌、つまり、酒の味を安定させるために酵母菌を殺すことです。酒の中の酵母菌を殺しておかないと、瓶内で発酵が進んで酒質が変化してしまうのです。
 火入れの温度が高すぎると酒の味の主要要素の有機酸などを変性させてしまい、旨みのない酒になってしまうので微妙な温度での火入れが必要になるわけです。
 その火入れの方法や温度、時間などは、蔵によって少しずつ違うようです。

 この「火入れ」を行わない酒が「生酒」です。
 「火入れ」は、絞りたて直後(貯蔵前)と、瓶詰め(出荷)直前2度、行われます。絞りたて直後のみ火入れした酒を「生詰め酒」、瓶詰め(出荷)直前のみ火入れする酒を「生貯蔵酒」、火入れを全く行わない酒を「生酒」というわけです。

   ●生酒・・・・一切火入れ無し。
   ●
生貯蔵酒・・絞りたて直後(貯蔵前)には火入れ無し。
   ●
生詰め酒・・瓶詰め(出荷)直前には火入れ無し。

 「生酒」は全く火入れを行っていないため、酒の本来の味わいが多分に残っていて、しっかりとした味の濃い酒が多いようです。「無濾過・生酒」なんて酒は、濃厚な味わいを身上としています。

 「火入れ」という技術は、現在では当たり前のことなのですが、温度計の無かった時代、つまり、明治以前では、門外不出の技術でした。この技術を持っていた蔵は、伏見、灘、伊丹、池田などの近畿の蔵元ばかりで、実際、江戸時代中期に出版された「人気酒番付」では、上位をこれらの地方の酒が独占していました。
 かつて、江戸幕府は、これらの近畿の酒、つまり、「下り酒」ばかりに酒市場を独占させてはおけないと、関東近在の蔵元を助成し、「下り酒追放」を試みますが、失敗に終わります。その原因は、火入れの技術でした。味の良い酒を醸すことはできたのですが、それを江戸に持ち込んだときには質が劣化して売れなくなったということでした。それほど、「火入れ」は重要な技術だったわけです。

 ところで、生詰め酒だ、生貯蔵酒だと紛らわしいことを言わないで、全く火入れを行わない酒以外は「生」という言葉を使ってはいけないとして欲しいものです。

(2002年1月)

戻る


inserted by FC2 system